ヘンリーの恋話

僕はヘンリー。健全で純真な呪術師だよ〜。
恋の話か〜。みんなそういうの好きだよね〜。まあ僕も別に嫌いではないけどね〜。
それなら、僕の好きな子の話聞いていく〜?

僕には今好きな子がいるんだ〜。サーリャっていう子。もう名前がかわいいでしょ〜。
カラスみたいに真っ黒い髪で、森の獣みたいに鋭い目で、とってもかわいい子なんだよ〜。
サーリャはね、僕と一緒で呪術師なんだ〜。いつも頑張って呪いの研究をしてるから、すごいなって思ってるよ〜。

サーリャのどこが好きなのって? すごくかわいいからだよ〜。
え? それだけじゃダメなの〜? う〜ん、何て言っていいかわかんないけど……かわいいし、頑張ってるし、ちょっと照れ屋さんで赤くなったりするとすごくかわいいよ〜。あはは、僕同じこと何回も言ってるね〜。

ちょっと話ずれるけど、僕の初恋の話もしようか〜。僕が初めて好きになったのは、施設にいたときに一緒だった女の子。その子はサーリャとはまた違う感じだったけど、とってもかわいかったよ〜。
よくみんなで施設を抜け出して、一緒に花冠を作ったりしてたな〜。作り方はその子が教えてくれたんだ〜。見つかって連れ戻されてからのお仕置きは厳しかったけど……でもいい思い出だよ〜。
僕、その子に好きだよって言おうと思ってたんだけど、ある日突然大人の人に連れていかれて、施設からいなくなっちゃったんだよね〜。それきり二度と会えてないんだけど、今頃どうしてるかな? どこかで元気にしてるといいな〜。

話を元に戻すね〜。そんなこんなで、僕、初めて好きになった子には気持ちを言えなかったから、サーリャにはもう絶対、好きだよって言って結婚してもらおうと思うんだ〜。
でもね、ヴィオールがこういうのはタイミングが大事なんだって言うから、ちょうどいい機会を伺ってるんだけど……でも最近ちょっと疲れちゃったな〜。もう言いたいんだけどな〜。

でも、難しいな〜って思うのは、サーリャにはほかに好きな人がいるみたいなんだよね。
ルフレっていう僕達の軍の軍師なんだけど、すごくいい人で、僕にいろいろ頼んでくれるから、僕も大好きなんだよ〜。
だからサーリャがルフレのことを好きな気持ちも分かるかな〜。悔しいけどね。
サーリャはいつもルフレのことを尾けてて、なんと夜中の寝返りの回数まで数えてるんだって!
すごいよね〜、僕はいくらサーリャが好きでも、寝返りの回数数えようとしたら途中で眠っちゃいそうだよ〜。そういうところも、サーリャがすごいなって思うところだね。好きな人のためとは言っても、そこまではなかなかできないと思うよ〜。

でも僕もね、サーリャのためならどんなお願いだって聞こうと思うし、そうしたら僕と結婚しようと思ってくれるかな? って。まだ諦める必要はないと思うんだよね〜。この軍のみんなだって殺そうと思えば殺せるし、そうしたら僕のこと好きになってくれるかな〜?ってね。

あれ〜? どうしたの、そんな顔して。
そんな暗い顔しないで僕みたいに笑えばいいよ〜!

そういえば、こないだサーリャと話してて、やっぱりかわいいな〜って思ったから、その時のことを話すね。
サーリャ、いつもみたいに呪いの研究をしてたから遊びに行ったら、どうせ来るなら呪術書とか呪術具とか持ってきてって言ったんだよね。だから僕の持ってる本と呪術具を全部持って行ったら、さすがにこんなにはいらないって目を丸くしててさ。あんなに驚いたサーリャは初めて見たから、かわいかったな〜。
僕、サーリャになら全部あげていいと思ったからあげようとしたんだけど、結局受け取ってくれなかったんだよね〜。ちょっと残念だけど、奥ゆかしい感じでそんなサーリャもいいなと思ったよ〜。

あとは、ついおとといのことだったかな〜。サーリャがルフレを尾けてるときに話しかけたら、気が散ってルフレを見失ったじゃないって怒ってたけど、怒った顔もかわいかったな〜。その後呪われちゃったんだけど、僕、サーリャの呪いって嫌いじゃないから別にいいんだ〜。

ルフレと言えば、ルフレを見てるときのサーリャって、いつもすごくしあわせそうでさ。
うふふって笑ってたり、うっとりしてたり、顔が赤くなって目を輝かせてたり……。そんなサーリャもかわいいと思うんだけど、見てるとなんかいい気分しないんだよね〜。胸の中に黒くて重いものがぐるぐるして、苦しいっていうか……どうしてだろうね?
そういえばサーリャを好きになってから、苦しいって思うことが増えた気がするな〜。毎日サーリャのことを考えちゃって、楽しいけどすごく苦しいんだ。恋って不思議だね〜。

それとねえ、こないだ軍の人がいっぱい死んじゃったんだけど、そのときのサーリャは落ち込んでたな〜。私が強くなかったから、救えなかったって。サーリャが強かろうが何だろうが、人なんて死ぬときは死んじゃうのにね〜。
だから僕にはサーリャの気持ちはよくわからなかったけど、野営地でその発表をしてたとき、サーリャがふらっと抜けてどこかに行っちゃったから、追いかけたんだ〜。サーリャ、泣きそうだった。なんかすごくお世話になってた人を助けられなかったみたい。
追いついたとき、僕に気づいたサーリャに睨まれたけど、今にも涙がこぼれそうでさ……なんだか昔の僕を思い出したよ〜。昔は僕も、泣き虫だったけど……施設で毎日痛いお仕置きいっぱいされて、泣いて泣いて、そしたらいつのまにかいつも笑顔でいられるくらい強くなれてたんだよね〜。
だから、いっぱい泣いたら強くなれるから、今はいっぱい泣いてまた頑張ろうって言ったんだ〜。そしたらサーリャ、顔を隠してどこかに走っていっちゃった。泣きべそかいてるサーリャも絶対かわいいと思うから、見たかったんだけどな〜。
でもサーリャが悲しいのはつらいから、ほんとは僕がそばについててあげたかったな〜。泣いたら強くなれるけど、強くなるまでは大変だと思うから、2人なら少しは楽かなって。だからね、最近はサーリャと早く結婚したいなって思うようになったよ〜。そしたら、いつも一緒にいられるからね〜。

だから僕と結婚してって言いたいんだけど、いいタイミングってやつがわかんないんだよね〜。もう言っちゃっていいかな〜? 結婚は勢いが大事らしいしね。
今のサーリャの呪いが解けたら言っちゃおうかな〜?
……え、今の呪いって何って? さっき言ってた、ルフレを尾けてるのを邪魔しちゃった後にかけられた呪いだよ〜。一週間、髪型がうまく決まらない呪い。せっかく結婚を申し込むなら、びしっと決まったかっこいい僕を見てもらいたいからね〜。

あはは、応援ありがと〜。もし無事に結婚が決まったら、また教えるね〜。
今日のところは僕の恋の話はこれでおしまい。どう〜? 面白かった〜?

<了>

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